アントワーヌ・グリーズマンのプレースタイルを徹底解説:質と量を兼ね備えた攻撃的司令塔

選手紹介

アントワーヌ・グリーズマンは、現代サッカーにおいて最も多才な選手の一人だ。キャリア初期の彼はウィンガーとしての役割を果たし、後にアトレティコ・マドリードで中央のポジションに適応することで、さらなる成長を遂げている。また、近年のワールドカップでは特にその能力が際立ち、彼のプレーはフランス代表の成功の鍵となった。この記事ではそんなグリーズマンについて紹介していきたい。

基本情報・成績

生年月日1991/03/21
国籍フランス
身長176cm
ポジションFW
利き足

初期のキャリア

グリーズマンは、フランス国内のユースチームで育ち、いくつかのクラブでトライアルを受けたが、小柄な体格のため評価が低かった。しかし、2005年にスペインのレアル・ソシエダのスカウトの目に留まり、同クラブのユースアカデミーに加入する。彼は着実に成長し、2009年にトップチームデビューを果たす。最初のシーズンで5ゴールを挙げ、レアル・ソシエダのラ・リーガ昇格に貢献した。彼の若手選手としての成長は目覚ましく、次の数シーズンでクラブの中心選手としての地位を確立した。

アトレティコ・マドリードでの成功

2014年、グリーズマンはアトレティコ・マドリードへ移籍し、その移籍金はクラブ記録となる約3000万ユーロであった。彼はこの移籍を通じて、一躍世界的なスター選手へと成長した。加入初年度から22ゴールを挙げ、クラブの重要な攻撃陣の一角を担った。2015-16シーズンには、UEFAチャンピオンズリーグでアトレティコを決勝に導いたが、レアル・マドリードに敗れて準優勝に終わった。しかし、個人的にはそのシーズンで得点力だけでなく、守備面での貢献も高く評価され、世界のトップフォワードの一人としての地位を確立した。

アトレティコ・マドリードでの彼の活躍は継続し、UEFAヨーロッパリーグ優勝やUEFAスーパーカップ、ラ・リーガ最優秀選手賞など数々のタイトルを手に入れた。さらに、彼は2度にわたってバロンドール候補に選ばれ、クラブと代表での活躍が世界的に評価された。

バルセロナ挑戦とアトレティコ復帰

2019年、グリーズマンは移籍金1億2000万ユーロでFCバルセロナへ移籍した。この移籍は当時のフットボール界で5番目に高額なものであり、バルセロナでの活躍に大きな期待が寄せられた。しかし、バルセロナでは期待されたような成果を上げられず、チームの戦術やメッシとの共存に苦労した。最終的には、バルセロナでの在籍期間中にコパ・デル・レイを獲得したものの、彼自身にとっては満足のいくパフォーマンスではなかった。

2021年、彼はアトレティコ・マドリードへ期限付きで復帰し、その後正式に完全移籍した。復帰後も、彼の得点力とアシスト能力は健在で、アトレティコ・マドリードの攻撃の要として活躍を続けた。2022-23シーズンには、リーガ・エスパニョーラのアシスト王に輝き、アトレティコ・マドリードのクラブ史上最多得点者となるなど、クラブでの記録を次々と塗り替えた。

フランス代表での栄光

グリーズマンは、2010年にフランスのU-19代表としてUEFA U-19欧州選手権で優勝し、その後フランス代表としてのキャリアを歩み始めた。2014年にはフランス代表の一員としてFIFAワールドカップに初出場し、翌2016年のUEFA欧州選手権ではフランスのエースとして活躍。大会得点王となり、フランスを決勝に導いたが、ポルトガルに敗れて準優勝に終わった。

2018年、グリーズマンはフランス代表の一員としてFIFAワールドカップに再び出場し、今回は優勝を果たした。彼は決勝戦でも重要な役割を果たし、大会全体を通してフランスの攻撃を支えた。この大会で彼はシルバーブーツ(得点ランキング2位)とブロンズボール(大会MVP3位)を受賞し、その才能とリーダーシップを世界に示した。

2022年のワールドカップでもフランス代表の中核として活躍し、フランスは準優勝を果たした。大会を通じてグリーズマンはミッドフィルダーとしての役割もこなし、攻守両面でフランスを支えた。2024年9月30日、グリーズマンは代表引退を表明し、137キャップ44ゴールという記録を残した。

プレースタイル

ここからはグリーズマンのプレースタイルについて詳しく見ていきたい。彼は技術的な能力と戦術的な理解力を併せ持つ選手であり、優れた得点力・創造性を有する。それに加えて献身性や豊富な運動量、守備での貢献も特徴的であり、常にチームのために働く姿勢が世界中から高く評価されている。

ウィンガーからセカンドストライカーへ

グリーズマンのキャリアは、レアル・ソシエダでウィンガーとしてスタートした。彼はスピードと技術力を武器に左サイドから攻撃を仕掛け、2013-14シーズンにはラ・リーガで16得点を記録。この活躍により、彼はヨーロッパの多くのビッグクラブから注目を集めることとなり、最終的にアトレティコ・マドリードが彼を獲得するに至った。

アトレティコ・マドリードでは、ディエゴ・シメオネ監督の下でプレースタイルが進化した。シメオネの4-4-2システムにおいて、グリーズマンは従来のウィンガーから中央のセカンドストライカーにシフト。センターフォワードの背後でプレーし、得点チャンスを作り出すクリエイティブな動きやスペースを見つけ出す能力を磨いた。そうして得点力を発揮するだけでなく、攻撃全体をコントロールする役割も果たすようになったのである。

フランス代表での活躍と進化

フランス代表においても、グリーズマンはその多才さを発揮している。特に2016年のUEFA欧州選手権(ユーロ2016)では、オリヴィエ・ジルーと2トップを形成し、ゴールデンブーツを獲得する活躍を披露。彼の6ゴールは大会最多であり、フランスを決勝まで導いた。こうしたストライカー的な側面は2018年のFIFAワールドカップでも継続され、グリーズマンは4ゴールを挙げてフランスの優勝に大きく貢献している。

しかしこの時期の彼は、典型的な得点者としての役割だけでなく、攻撃のリンクマンとしての能力も目立っていた。特に、彼の賢い動きは相手の守備陣を混乱させ、ジルーやキリアン・エムバペといった他のアタッカーにスペースを作り出す重要な要素となっていたのだ

2022年ワールドカップでの役割の再定義

2022年のワールドカップでは、グリーズマンの役割が再び進化した。ディディエ・デシャン監督は、ポール・ポグバやエンゴロ・カンテといった中盤の主力選手が不在だったため、グリーズマンをより深い位置でチームのボール回しに関与させることを決断。この新たな役割で、グリーズマンは創造性を発揮し、攻撃と守備の両面でチームに貢献した

グリーズマンはこの大会で21回のチャンスを作り出し、3アシストを記録するなど、フランスの攻撃の中心として君臨。また、オープンプレーからのシュートチャンスを創出するシークエンスにも30回以上関与し、リオネル・メッシやエムバペに次ぐ活躍を見せた。彼は中盤と前線をつなぐリンクマンとして、ボールを奪取しつつ、鋭いパスで前線の攻撃を支援する役割を果たしたのだ

守備面での貢献

グリーズマンの特筆すべき点として、その守備への貢献度も見逃せない。例えば、2022年ワールドカップで彼は守備面でも大きな役割を果たした。彼は1試合平均3.3回のタックルとインターセプトを記録し、フランスの守備ブロックの一部として重要な働きをしたのだ。

彼の守備的なタスクは特にモロッコ戦で顕著であり、この試合ではチーム最多のタックル数を記録。中盤のオーレリアン・チュアメニやユスフ・フォファナと連携しながら、守備面でも攻撃面でもチームを支えた。実際、ポール・ポグバやカンテが不在の中、フランスは失点を1試合平均0.83点に抑え、2018年の優勝時とほぼ同じレベルの守備力を維持。こうした堅守の背景には、グリーズマンの献身的な守備があったのだ。

多様な得点パターン

グリーズマンの多様な得点能力も見逃せない要素である。彼は左足を得意とするが、右足やヘディングでも多くのゴールを記録。さらに、彼はペナルティエリア外からのロングシュートや、フリーキック、バイシクルキックによるスペクタクルなゴールも多く決めており、そのバリエーション豊かな得点パターンがチームにとって非常に重要な武器となっている。

なお、グリーズマンの得点の多くは、巧みなポジショニングとワンタッチでのフィニッシュから生まれる。特にアトレティコ・マドリードでは、彼の得点の多くが1タッチでのシュートによるものであり、彼の素早い判断と動き出しが決定機を生み出す重要なカギとなっているのだ。また、彼はペナルティキックやフリーキックのスペシャリストとしても知られており、セットプレーでもチームに貢献している。

創造性と戦術的な柔軟性

グリーズマンのプレースタイルは、単なる得点者やアシスト役にとどまらず、試合のあらゆる局面で影響力を発揮する。彼はピッチ上での状況判断が非常に優れており、チームメイトの動きを予測して適切なポジションに入り、攻撃を組み立てる能力に長けている。特に、彼は中盤でのボール回しや、相手のプレスを回避するための巧みなポジショニングを得意としている。

グリーズマンの戦術的な柔軟性も大きな特徴であり、さまざまなシステムやフォーメーションに適応できる能力を持っている。アトレティコ・マドリードでは、4-4-2や3-5-2といった異なるフォーメーションでプレーし、前線でのフィニッシャーから中盤でのクリエイター役まで多岐にわたる役割を担当。フランス代表でも同様に、状況に応じて中盤の深い位置でプレーすることが増えており、チームの攻守両面で重要な存在となっている。

プレー動画

まとめ

アントワーヌ・グリーズマンの得点力、創造性、守備への貢献、そして戦術的な柔軟性は、チームにとって欠かせない要素であり、彼の存在は攻守両面でチームを支える大きな力となっている。2022年のワールドカップでの彼のパフォーマンスは、彼が単なる得点者ではなく、全体のゲームをコントロールできる選手であることを証明していた。彼のようなプレーヤーは、どの監督にとっても極めて重宝する存在といえるだろう。

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