ドゥシャン・ヴラホヴィッチは、セルビアのベオグラード出身のサッカー選手であり、現在はユヴェントスとセルビア代表でプレーしている。彼はストライカーとしての高い身体能力と技術力を持ち、将来の更なる活躍が期待される選手の一人である。この記事ではそんなヴラホヴィッチについて紹介していきたい。
基本情報・成績
生年月日 | 2000/01/28 |
国籍 | セルビア |
身長 | 190cm |
ポジション | FW |
利き足 | 左 |
キャリア初期
ヴラホヴィッチのキャリアは、ベオグラードの小さなサッカースクールで始まった。その後、OFKベオグラードのユースチームに所属し、しばらくしてからセルビアの強豪クラブ、パルチザンに加入した。2015年、彼はわずか15歳でプロ契約を結び、パルチザンの歴史上最年少での契約選手となった。
2016年2月21日、ヴラホヴィッチはセルビア・スーペルリーガでのデビューを果たし、パルチザンの最年少デビュー記録を樹立した。同年4月2日には、ラドニク・スルドゥリツァ戦で初ゴールを挙げ、クラブ史上最年少スコアラーにもなった。彼はパルチザンで21試合に出場し、2つのセルビアカップタイトルを獲得した。
セリエA挑戦
2018年、ヴラホヴィッチはイタリアのフィオレンティーナに移籍することが決まった。この移籍は彼が18歳の誕生日を迎えた日に正式に成立したが、実際にプレーできるのは半年後の2018年7月からだった。彼はフィオレンティーナで次第に頭角を現し、2019-20シーズンには30試合に出場して6ゴールを挙げた。
ヴラホヴィッチの飛躍的な成長は、2020-21シーズンにおいて明確になった。このシーズンで彼は21ゴールを挙げ、セリエAのベストヤングプレイヤー賞を受賞した。特にユヴェントスとのアウェー戦での勝利に貢献するゴールや、ベネヴェント戦でのハットトリックなど、決定力の高さを証明した。また、このシーズンを通じて、ヴラホヴィッチはヨーロッパのトップクラブから注目される存在となった。
ユヴェントスへの移籍
2022年1月28日、22歳の誕生日にヴラホヴィッチはユヴェントスに移籍した。この移籍は7000万ユーロという巨額の移籍金で成立し、彼はユヴェントスでの背番号7を受け継いだ。この番号は以前、クリスティアーノ・ロナウドが着けていた番号であり、大きな期待がかけられていた。
ユヴェントスでのデビュー戦となった2022年2月6日のヘラス・ヴェローナ戦で、ヴラホヴィッチはデビューゴールを決め、チームの勝利に貢献した。その後も安定したパフォーマンスを見せ、チャンピオンズリーグでもデビュー戦で得点を挙げ、チームの中心的存在となった。2022年4月にはセリエAで50ゴールを達成し、セルビア人としては歴代2位の若さでの達成となった。さらに、同年のコッパ・イタリア決勝でもゴールを決めたが、試合はユヴェントスがインテルに敗北している。
その後もユヴェントスでの活躍は続き、2024年にはコッパ・イタリアでの優勝を果たし、個人としてもキャリアの中で初の主要トロフィーを手にした。ユヴェントスでは、2024年シーズン終了時点で110試合に出場し、48ゴールを記録している。
セルビア代表での活躍
ヴラホヴィッチはセルビア代表としても早くから頭角を現し、U-15から各年代の代表に選出されてきた。2020年にはセルビアA代表に初選出され、同年のUEFAネーションズリーグでハンガリー戦にてA代表デビューを果たした。彼の代表初ゴールは、2020年11月18日のロシア戦であり、5-0で勝利した試合での一撃だった。
その後、2022年のワールドカップ予選ではセルビア代表のエースとして活躍し、特にアゼルバイジャン戦での2ゴール、ポルトガル戦での勝利に貢献した。セルビアはワールドカップの出場権を獲得し、ヴラホヴィッチはその立役者の一人となった。2022年のカタールワールドカップでも、ブラジル戦やスイス戦でプレーし、スイス戦ではゴールも決めている。
プレースタイル
ここからは、ヴラホヴィッチのプレースタイルについて詳しく見ていきたい。彼のプレースタイルは主に優れたシュート技術とフィジカルの強さ、そして鋭い動き出しによって形作られている。
フィジカルと技術のバランス
ヴラホヴィッチの最大の特徴の一つは、そのフィジカルの優秀さである。彼は大柄で筋肉質な体型を持ちながらも、非常に柔軟な動きを見せることができる。特にペナルティエリア内でのプレーでは、相手ディフェンダーを体で押さえ込み、ボールをキープしながらゴールチャンスを作り出すことができる。さらに、彼はタッチの繊細さも兼ね備えており、ゴール前では冷静にボールを扱い、正確なシュートを放つ能力がある。このフィジカルとテクニックのバランスが、彼を優秀なストライカーとして際立たせている。
得意の得点パターン
ヴラホヴィッチは、これまで数多くの得点を挙げてきた。特にクロスやセットプレーからの得点シーンに強く、横からのラストパスを巧みに処理することで多くのゴールを決めている。また、ペナルティエリア外からのロングシュートも得意としており、強力なシュートでゴールキーパーに反応の余地を与えない場面が多い。彼は得点のタイミングを見極める能力に長けており、相手ディフェンダーの間に絶妙なポジショニングを取ってシュートに持ち込む技術と嗅覚がある。
加えて、彼はカウンター攻撃でも大きな役割を果たす。特にユヴェントスのようなトップクラブでは、守備から攻撃への素早い展開も求められるが、ヴラホヴィッチはそのスピードとパワーを活かしてカウンターの先導役となり、チームに得点のチャンスをもたらすことができる。
攻撃面の改善点
ヴラホヴィッチの弱点として挙げられるのが、逆足でのプレーである。彼は右足があまり得意ではなく、シュートやパスの場面で右足を使うことに不安を感じることが多い。このため、デリケートな場面で左足を多用しすぎる傾向があり、プレー選択が制限される結果、相手ディフェンダーに対応されやすくなる場合がある。また、パスの精度にも改善の余地があり、特にパスの強弱にムラがあることが指摘されている。この点が改善されれば、より一層のクリエイティブなプレーが期待できるだろう。
オフザボールの動きと連携
ヴラホヴィッチはゴール前でのフィニッシュ能力だけでなく、オフザボールの動きにも優れている。彼は相手ディフェンダーを引きつけながらスペースを作り出す能力があり、味方選手にチャンスを提供することができる。また、ターゲットマンとして相手ディフェンダーとバトルを繰り広げる中で、ボールを保持し、味方に素早くパスを供給する能力も高い。特に、降りてきてボールを受け、そこから展開するプレーにおいては、シンプルながら視野の広さが際立つ。
しかし、彼が他のトップストライカーと比べて劣る点として、味方にチャンスを作り出す場面が少ないことが挙げられる。ロベルト・フィルミーノやカリム・ベンゼマのような、チーム全体の攻撃をクリエイトするタイプのフォワードとは異なり、ヴラホヴィッチはフィニッシュに特化したプレーを得意としている。とはいえ、彼のパスや連携プレーの精度が向上すれば、将来的にはアシスト数を伸ばし、より多面的な攻撃力を持つ選手に成長する可能性が高い。
ドリブル、ヘディング、守備
ヴラホヴィッチは、その大柄な体格を活かしたドリブルにも定評がある。前方にスペースがある状況では、相手ゴールに向かって突進する姿が印象的だ。また、空中戦にも強く、ハイボールに競り勝つ能力がある。ただし、ゴール前でのヘディング精度はまだ課題が残っており、より多くのヘディングによる得点が求められている。
一方の守備面では、ヴラホヴィッチはプレスの強度が足りないとされることが多い。相手ディフェンスラインに対して効果的にプレッシャーをかける場面が少なく、プレス時の速さや集中力に欠けることがある。このため、相手にボールを回されてしまう場面があり、特にユヴェントスのような守備に重点を置くチームでは、彼の守備力の向上がより求められるところだ。
プレー動画
まとめ
ドゥシャン・ヴラホヴィッチは、現代サッカーにおける優れたセンターフォワードとして、そのポテンシャルを発揮している。彼のフィジカルとテクニックを活かしたプレーは、優れた得点パターンを作り出すなど、ユヴェントスの攻撃において重要な存在である。一方で、逆足精度の改善や守備面での向上が課題として残っており、これらの点を克服することで、彼はさらなる成長を遂げるだろう。ユヴェントスにとって、ヴラホヴィッチはチーム再建の重要なピースであり、彼の今後の更なる成長とともにチームの成功が期待されているところだ。