フレンキー・デ・ヨングのプレースタイルを徹底解説:オールラウンドな天才ミッドフィルダー

選手紹介

フレンキー・デ・ヨングは、現在バルセロナに所属するミッドフィルダーである。天性のプレーセンスを有する彼は、中盤を起点にしつつピッチのあらゆるエリアに影響を及ぼす能力を有している。この記事ではそんなデ・ヨングについて紹介していきたい。

基本情報・成績

生年月日1997/05/12
国籍オランダ
身長181cm
ポジションMF
利き足

キャリア初期

デ・ヨングは6歳で地元クラブASVアルケルでサッカーを始め、2005年にヴィレムII/RKCのアカデミーに入団。2015年にヴィレムIIでプロデビューを果たすと、翌年にアヤックスへと移籍した。

移籍当初のアヤックスでは主にセカンドチームでプレーしたが、2017-18シーズンに入りトップチームに定着するようになる。そして翌2018-19シーズンに本格的なブレイクを果たすと、クラブの国内二冠(エールディビジとKNVBカップ)の達成に加え、UEFAチャンピオンズリーグ準決勝進出にも貢献。同シーズンのエールディビジ年間最優秀選手に選ばれるなど、ヨーロッパでもトップクラスの若手ミッドフィルダーとして認識されるようになった。

バルセロナへの移籍

2019年7月、デ・ヨングは総額8600万ユーロの移籍金でスペインの名門FCバルセロナに加入した。バルサでは怪我による戦線離脱や去就問題に悩まされながらも、在籍5シーズンで200試合以上に出場。これまでリーグ戦、国内カップ戦の二冠に加え、スーペルコパのタイトルを獲得している。

オランダ代表キャリア

2018年9月、デ・ヨングはオランダのA代表でデビューを果たすと、瞬く間に代表レギュラーに定着した。これまでオランダ代表として計50試合以上に出場し、EURO2020や2022年のFIFAワールドカップといった主要大会にも参加。2023年9月を最後にしばらく代表を離れたが、2024年11月に1年2か月ぶりとなる招集を受けている。

プレースタイル

ここからは、デ・ヨングのプレースタイルについて詳しく見ていきたい。彼のプレースタイルは多面的な能力によって構成されており、中盤のあらゆるポジションを務めるだけでなく、状況によってセンターバックでも起用されるなど、幅広い役割をこなすことが可能である。

ビルドアップ能力

デ・ヨングの最大の強みは、後方からのビルドアップを主導する能力である。アヤックスやバルセロナのようにボールポゼッションとビルドアップを重視するチームにおいて、彼のプレッシャー回避能力は特に重要な役割を果たす。ボールに多く触りながらゲームメイクしつつ、相手選手からプレスを受けた際には繊細なボールタッチ視野の広さを活かし、冷静かつ積極的に局面を打開するプレーを選択。滑らかなドリブルで相手を抜き去ることでスペースを作り出し、適切なタイミングで前線へとボールを供給する。このように相手のプレッシャーを吸収しつつ、チームの攻撃を滑らかに進行させる重要な役割を果たせるのだ。

身体能力と守備面での貢献

その華麗なオン・ザ・ボール時のプレーからは想像しづらいが、デ・ヨングは優れた守備力と身体能力も兼ね備えている。彼は広い範囲をカバーできる運動量を持っており、守備時には後方に下がりディフェンスラインをサポートすることも可能。対人戦でもフィジカルが求められる場面で容易に力負けせず、相手の攻撃を防ぐ役割を果たす。

また、インターセプト能力が高く、相手のパスコースを読み取りカットすることで、守備から攻撃へのスムーズな切り替えにも貢献。センターバックとして起用された経験もあるなど、守備面においても高く評価されていることが窺える。

流動的なポジショニング

デ・ヨングのもう一つの大きな特徴は、その多様なポジション適応力である。彼はディフェンシブミッドフィールダーに留まらず、攻撃的な役割センターバックとしても活躍できる柔軟性を持つ。かつてアヤックスでプレーしていた頃には、主に中盤の要としてハイテンポなビルドアップを管理し、チームのアグレッシブな戦術を攻守に支えていた。一方でバルセロナ移籍後は、主に中盤から攻撃を推進する役割を担い、ビルドアップだけでなくチャンス創出にも積極的に関与。ファイナルサードへ侵入し、ラストパスを供給するチャンスメーカーとしての能力も磨かれている。

しかし、そうしたデ・ヨングの流動的なポジショニング・幅広い役割が裏目に出ることもある。バルセロナのように、ポジショナルプレーを重視する戦術ではやや扱いが難しい側面があるのだ。

というのも、彼は守備時や攻撃時の位置取りが安定しないことがあり、その結果としてスペースを空けてしまい、チーム全体の構造が崩れる原因となることがある。特に、ビルドアップ時に後方からドリブルで上がる際に、サポート役がいないとリスクが高まってしまう。現在のバルセロナでは、かつてのセルヒオ・ブスケツのように彼の自由な動きを支える卓越したピボット役が不在のため、そうしたリスクをカバーするのが難しくなっているのだ。

バルセロナの戦術との相性

アヤックス出身のオランダ人選手であるデ・ヨングは、あの伝説的選手であるヨハン・クライフを彷彿とさせる部分がある。そのプレースタイルに関しても、抜群のスキル、視野、運動量、インテリジェンスを活かしてピッチの広範囲に影響を及ぼす点は共通しているといえるだろう。しかし、デ・ヨングのプレーはクライフのように前線で創造性を発揮するよりも、より後方でのゲームメイクに重きを置いているため、普段は「第三ラインのプレーメーカー」としての側面が強調されている。ルート・フリットやフランク・デ・ブールからも指摘されるように、彼はバルセロナのテンポに適応し、セルヒオ・ブスケツの後継者としての期待を背負っているのだ。

しかし先述の通り、ポジショナルプレーを主軸に置くバルセロナにおいて、デ・ヨングのボール保持時間の長さ頻繁なポジション移動は、チームの攻撃のテンポや構造に悪影響を与えることがある。これは彼が自由に動き回ることを好むプレースタイルが一因であり、現状のバルセロナでは、彼のポテンシャルを最大限に発揮できる環境が十分に整っていないといえるだろう。確かに、デ・ヨングは自身のスタイルを少しずつバルセロナに適応させており、素晴らしいパフォーマンスを披露する試合も少なくない。とはいえ、そのポテンシャルの高さを考慮すれば、より継続的かつハイレベルな活躍に期待したいところだ。

プレー動画

まとめ

フレンキー・デ・ヨングは、現代サッカーにおいて稀有な「万能型ミッドフィールダー」であり、ビルドアップからチャンスメイク、そして守備に至るまで様々な局面でその才能を発揮できる選手である。しかし、バルセロナの戦術と完全に適合するには、チームのテンポへの更なる適応が求められる。一方のバルセロナとしても、デ・ヨングのポテンシャルを最大限に引き出すためには、彼の持ち味を十全に発揮できるよう戦術的工夫を施す必要があるかもしれない。移籍の可能性も含め、今後のデ・ヨングおよびバルセロナの動向に注目したいところだ。

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