ラウタロ・マルティネスは、現在のサッカー界で最も優れたストライカーの一人と評される選手だ。所属先のインテルではキャプテンを務めており、アルゼンチン代表としても活躍を続けている。この記事ではそんなラウタロについて紹介していきたい。
基本情報・成績
生年月日 | 1997/08/22 |
国籍 | アルゼンチン |
身長 | 174cm |
ポジション | FW |
利き足 | 右 |
キャリア初期
ラウタロは地元のクラブであるリニエルスのユースチームに所属し、そこで優れたパフォーマンスを見せた。特にU-17カテゴリーでは、2013年に13ゴールを記録し、全国カップ決勝でも得点を記録。チームはPK戦の末に敗れたものの、この活躍がきっかけで、アルゼンチンの名門クラブであるラシン・クラブと2014年に契約を結ぶことになった。
2015年11月1日、ラウタロはプロデビューを果たし、2-0で勝利した試合でディエゴ・ミリートに代わって途中出場した。2016年には初ゴールも記録したが、同年4月にはキャリア初の退場も経験している。翌シーズンからは、リサンドロ・ロペスの負傷によりスタメンとしての出場機会が増え、2016-17シーズンにはリーグ戦で23試合に出場し9ゴールを挙げた。
2018年にはヨーロッパのクラブからの関心が高まり、アトレティコ・マドリードからのオファーを受け、移籍がほぼ決まりかけた。しかし最終的にラシンと契約を延長し、クラブに残ることを決断した。この時期には、コパ・リベルタドーレスでのデビュー戦でハットトリックを達成するなど、より注目される存在となった。
インテルへの移籍
2018年7月4日、ラウタロはイタリアのインテル・ミラノに移籍し、5年契約を結んだ。移籍金は2270万ユーロと報じられ、彼の能力に対する大きな期待が寄せられた。9月29日にサンシーロで行われたカリアリ戦でセリエA初ゴールを記録すると、2019年にはヨーロッパリーグでも得点を挙げ、チームの主要な攻撃オプションとして定着していった。
インテルでのキャリアは順調に進み、2020-21シーズンにはセリエA優勝を達成。クラブの11年ぶりとなるリーグタイトル獲得に貢献した。さらに、2023-24シーズンには自身最多となる24ゴールを記録し、セリエA優勝と共にリーグ得点王「カポカンノニエーレ」にも輝いた。また、このシーズンの最優秀選手にも選ばれ、彼の評価はますます高まった。
インテルでの成功は自国リーグにとどまらない。ラウタロはUEFAチャンピオンズリーグでも目覚ましい活躍を見せ、2022-23シーズンの準決勝では、ライバルであるACミランとの対戦で決定的なゴールを記録。インテルを2010年以来の決勝進出へと導いている。
アルゼンチン代表での活躍
ラウタロはアルゼンチン代表としても数々の国際大会で成功を収めている。U-20代表では2017年の南米ユース選手権で5ゴールを挙げ、同大会の得点王となった。その後、FIFA U-20ワールドカップにも出場したが、グループステージで敗退した。
2018年にはアルゼンチンA代表に初招集され、同年3月に行われたイタリアとの親善試合でデビューを果たす。その後も代表での活躍を続け、2019年のコパ・アメリカではカタール戦でゴールを記録、アルゼンチンをノックアウトステージ進出へ導いた。さらに、ベネズエラとの準々決勝では見事なバックヒールでゴールを決め、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。
2021年にはアルゼンチンがコパ・アメリカで優勝を果たし、ラウタロもその成功に大きく貢献。同大会では3ゴールを記録した。また、同年のワールドカップ予選でもアルゼンチン代表の一員として活躍し、2022年にはワールドカップ優勝という偉業を成し遂げた。
そして2024年のコパ・アメリカでも、ラウタロは5ゴールを挙げ、得点王「ゴールデンブーツ」に輝いた。決勝では延長戦で決勝ゴールを決め、アルゼンチンに連覇をもたらしている。
プレースタイル
ここからは、ラウタロ・マルティネスのプレースタイルについて詳しく見ていきたい。彼は広範囲にわたるスキルを駆使するタイプであり、味方との連携を図りながら効果的にチャンスを作り出せる。こうした「オールラウンドなフォワード」としての能力は、インテルの攻撃に大きな影響を与えている。
ポジショニングセンス
ラウタロ・マルティネスのポジショニングセンスは、彼のプレースタイルにおける中心的な要素である。彼はフィールド全体を把握し、どこにスペースが生まれるかを常に考えて動いている。そのため、相手ディフェンダーの背後やディフェンスラインの間に絶妙なタイミングで入り込むことができ、精度の高いフィニッシュへと繋げていく。また、彼はゴール前の「ハーフスペース」をうまく利用することができる選手であり、そこから周囲の味方との連携でチャンスを作り出していく能力も高い。
ラウタロの動きは、ただ単に速さやフィジカルに頼るものではなく、戦術的なセンスに基づいたものである。自らスペースを見つけ出し、そこに走り込むことで、相手ディフェンスの組織を崩す。周囲の状況をしっかりと認識しているため、自身の得点機会だけでなく、チームメイトにもスペース延いてはチャンスを提供することができるのだ。
精密なフィニッシュ技術
ラウタロは、そのフィニッシュ技術が非常に高く評価されている。彼はゴール前で冷静にシュートを放ち、精度とパワーを両立させることができる。右足、左足の両方で正確なシュートを打つことができるため、相手ディフェンダーはどちらの足でシュートが来るのか予測するのが難しい。また、彼のフィニッシュには多様性があり、力強いロングシュートから、繊細なチップシュートまで、あらゆる状況に対応できる。
彼のゴール前での冷静さと決定力は、多くの重要な場面で発揮されている。特に、試合終盤のプレッシャーがかかる状況でも、落ち着いてボールを処理し、得点に結びつける能力がある。これにより、彼はチームの勝利に直接貢献する存在となっている。
また、ラウタロは空中戦にも強く、ヘディングでの得点も得意としている。身長こそ高くないが、タイミングの良いジャンプと的確なヘディング技術によって、クロスやセットプレーからこれまで何度もゴールを記録してきた。
テクニックとフィジカル
技術面でもラウタロは卓越しており、特にボールコントロールとドリブルスキルが際立っている。彼は狭いスペースでもボールをうまく扱い、ディフェンダーのプレッシャーを受けても冷静にボールを保持することができる。この技術が、彼のプレーにおける攻撃的な柔軟性を高めている。
また、マルティネスのフィジカルは非常に強く、相手ディフェンダーとの競り合いでも劣らない。彼は強力な体幹と脚力を持ち、フィールド上で安定したプレーを続けることができる。特に、パワーとアジリティを兼ね備えているため、瞬時に方向を変えて相手を置き去りにするドリブルが得意である。
チームメイトとの連携
ラウタロはゴールを決めるだけでなく、チームメイトに対しても多くのアシストを提供する能力を持っている。彼のパスセンスは優れており、特にクイックなワンタッチプレーで相手ディフェンスを崩すシーンが多い。また、ボールを受けると同時に相手ディフェンダーを引きつけることで、他の攻撃陣にスペースを作り出す能力も備えている。
中でも、ラウタロは相方のフォワードと見事な関係性を築くことが多い。例えば、数年前にはインテルでロメル・ルカクと息の合ったコンビを結成し、セリエA優勝に大きく貢献。現在はマルクス・テュラムとのコンビで攻撃を牽引しており、再びインテルの攻撃の核となっている。また、アルゼンチン代表でもリオネル・メッシとの連携が非常に良好で、メッシのパスから多くのゴールを生み出している。
守備面での貢献
現代のストライカーには守備面での貢献も求められるが、ラウタロもその例外ではない。彼は、攻撃だけでなく、相手のビルドアップを阻止するために高い位置からプレスをかける能力を持っている。彼のプレスは組織的で、無駄な動きをせずに効率的に相手のパスコースを遮断する。
ラウタロは、相手ディフェンダーがボールを処理しようとする瞬間に積極的にプレッシャーをかけ、相手のミスを誘発することができる。このような守備の意識が高いことにより、チーム全体の守備組織が引き締まり、相手に効果的な攻撃を許さない。また、守備時には中盤やディフェンスラインに戻ってサポートすることもあり、チーム全体のバランスを保つ重要な役割を果たしている。
強靭なメンタリティ
ラウタロの強さはフィジカルだけでなく、メンタル面でも際立っている。彼はプレッシャーのかかる場面でも冷静さを失わず、重要な試合や決勝の舞台で何度も決定的なゴールを挙げている。近年のコパ・アメリカでもそのメンタルの強さが光り、アルゼンチン代表のタイトル獲得に大きく貢献してきた。
彼は、逆境に強い選手でもある。加入当初のインテルでの苦しい時期を乗り越え、努力を重ねてレギュラーポジションを獲得した経緯からも分かるように、どんな困難な状況でも自身のスキルを発揮し、成長を続ける強い意志を持っている。このようなメンタルの強さが、彼を一流の選手として際立たせる要因となっているのだ。
プレー動画
まとめ
ラウタロ・マルティネスは、現代サッカーにおいてトップレベルのストライカーである。彼のプレースタイルは攻守において機能的であり、特に攻撃面の多才さは目を見張るものがある。そんな彼が、インテルとアルゼンチン代表の両方で重要な役割を担い、大きな貢献を果たしているのも驚くべきことではない。これからもさらなる活躍が期待される選手であり、サッカー界において重要な存在であり続けるであろう。