マッツ・フンメルスは、ドイツを代表するセンターバックの一人である。これまでは国内クラブのドルトムント、バイエルン・ミュンヘンでキャリアを積み上げてきたが、2024-25シーズンにはイタリア・ローマへと移籍。国外クラブでどのようなパフォーマンスを見せられるかに注目が集まっているところだ。この記事ではそんなフンメルスについて紹介していきたい。
基本情報・成績
生年月日 | 1988/12/16 |
国籍 | ドイツ |
身長 | 191cm |
ポジション | DF |
利き足 | 右 |
キャリア初期
フンメルスは、6歳でバイエルン・ミュンヘンのユースアカデミーに入団した。彼の才能は早くから注目され、2006年12月にはプロ契約を結ぶこととなった。バイエルンでは、主にリザーブチームでプレーしており、2006-07シーズンにはブンデスリーガで1試合に出場した。しかし、トップチームでの出場機会は限られており、さらなる成長を求めて2008年1月にボルシア・ドルトムントにレンタル移籍した。
ドルトムントでの成功
ドルトムントへの移籍はフンメルスのキャリアにおける大きな転機となった。彼はすぐにレギュラーとしての地位を確立し、当時新加入のネヴェン・スボティッチと強力なセンターバックコンビを形成した。ドルトムントでの最初のフルシーズンとなる2008-09シーズンには、彼の守備的な貢献と卓越したパス能力が際立ち、クラブは彼を完全移籍で獲得することを決定した。
フンメルスは、2010-11シーズンにチームをブンデスリーガ優勝に導き、さらに2011-12シーズンにはリーグとDFBポカールの二冠を達成した。この期間、ドルトムントはドイツ国内で最強のチームの一つとなり、フンメルスのパフォーマンスは国内外で高い評価を受けるようになった。2013年にはUEFAチャンピオンズリーグ決勝にも進出したが、バイエルン・ミュンヘンに敗れ準優勝となった。
バイエルン・ミュンヘンへの復帰
2016年、フンメルスはバイエルン・ミュンヘンに再び加入することが発表された。この移籍は約3000万ユーロと報じられ、彼はクラブでの成功を期待されていた。バイエルンでは、3シーズンにわたってブンデスリーガを連覇し、DFBポカールやDFLスーパーカップのタイトルも獲得した。しかし、フンメルス自身の出場機会やパフォーマンスに関しては批判もあり、時には控えに回ることもあった。
ドルトムントへの帰還
2019年、フンメルスは再びドルトムントに戻ることとなった。この移籍は多くのサポーターから歓迎され、彼は再びチームの中心選手として活躍することになった。彼の復帰後、ドルトムントは2020-21シーズンにDFBポカール優勝を果たし、フンメルスは再びクラブのリーダーシップを発揮した。また、2024年にはチャンピオンズリーグ準優勝を達成し、彼のキャリアにおいてもう一度国際的な舞台での成功に近づいた。
イタリア・ローマへ
2024年、フンメルスはイタリアのローマに移籍し、初めてドイツ国外のクラブでプレーすることとなった。彼はローマでの新たな挑戦に挑みつつ、キャリアの終盤を迎えることとなる。
ドイツ代表での活躍
フンメルスは、ドイツ代表としても重要な役割を果たしてきた。2010年に代表デビューを果たし、2014年のFIFAワールドカップではドイツを優勝に導く貢献を果たした。この大会ではフランスとの準々決勝で決勝点を挙げるなど、守備だけでなく攻撃面でも存在感を示した。フンメルスはまた、2012年、2016年、2020年のUEFA欧州選手権にも出場しており、2014年のワールドカップでの活躍によりFIFAワールドカップのオールスターチームにも選出された。
しかし、2018年のワールドカップではチームがグループステージで敗退し、個人的には苦い結果に終わった。その後、ヨアヒム・レーヴ監督は一時的にフンメルスを代表から外したが、2021年にUEFA EURO 2020に向けて再び代表に復帰した。
プレースタイル
ここからは、フンメルスのプレースタイルについて詳しく見ていきたい。彼のプレーを特徴づけるのは、そのフィジカルと空中戦の強さ、そして卓越したポジショニングと読みの鋭さである。
フィジカルの強さと守備力
フンメルスのプレースタイルにおいて最も注目すべき特徴は、彼の優れたフィジカル能力である。身長191cmの彼は、空中戦に強く、対人プレーにおいても高い成功率を誇る。特にセットプレー時の守備において、その高さと強さはチームにとって非常に貴重である。また、フィジカルな強さだけでなく、彼の動きは非常に洗練されており、無駄のない動きで相手を制圧することができる。
具体的なデータからもその実力が明らかだ。例えば、2023年のチャンピオンズリーグにおいて、フンメルスは1試合あたり平均4.1回のタックルを成功させ、1.9回のインターセプト、5.1回のクリアリングを記録している。これにより、彼は常に相手チームにとって厄介な存在であり、攻撃を効果的に封じ込めている。これらのデータは、彼が依然としてトップクラスの守備力を持ち、試合を通じて安定したパフォーマンスを提供できることを示している。
また、フンメルスは、ボックス内外での危険を素早く察知する能力に長けており、相手のチャンスを未然に防ぐ。彼の守備における「読み」は卓越しており、特に試合の重要な局面で冷静な判断を下し、適切なポジショニングを取ることで相手の攻撃を無力化する。このように、彼は守備ラインを統率し、自らが中心となって危機を回避する能力を持っている。
ポジショニングと状況判断の巧みさ
フンメルスのプレースタイルで特筆すべきもう一つの要素は、その優れたポジショニング能力である。彼はゲーム全体を通じて相手の動きを読み、最適なポジションを取ることで守備を安定させている。特に相手のカウンター攻撃時には、ポジションを崩さずに相手の攻撃の意図を見抜き、的確なタイミングでボールを奪取することができる。
また、彼はディフェンスライン全体をリードするリーダーシップも兼ね備えており、他のディフェンダーやミッドフィルダーに対しても指示を出すことで、チーム全体の守備組織を高いレベルで維持している。このリーダーシップは、ドルトムントやバイエルン・ミュンヘンでのキャリアを通じて培われたものであり、ローマでもその経験が活かされるだろう。
フンメルスのポジショニングは、単に守備を固めるだけでなく、試合の流れを制御する役割も果たしている。彼は相手の攻撃がどこから来るのかを正確に予測し、その攻撃の芽を早い段階で摘み取ることができる。これにより、守備陣全体が余裕を持って対処できるようになり、チーム全体の安定感を向上させる。
ビルドアップとパス能力
フンメルスは守備面での貢献だけに留まらず、攻撃の起点としても優れた役割を果たしている。彼のビルドアップ能力は高く、正確な長短パスを織り交ぜることで、後方からの攻撃の開始をスムーズに行うことができる。彼は特に相手のプレスを受けても冷静に対処し、ディフェンスラインから中盤や前線へボールを運ぶ役割を担っている。
例えば、彼のパス精度は非常に高く、時には相手の守備ラインを切り裂く縦パスを通してチャンスを創出することもある。彼のロングパスはしばしば攻撃の鍵を握り、相手の守備を崩すための有効な手段となっている。また、フンメルスは状況に応じてリスクを冒すこともあり、難しいパスを試みる場面も見られるが、これが成功した場合、チームにとって大きなアドバンテージとなる。
しかし、彼のビルドアップにはリスクも伴う。特にプレッシャーが強い場面では、無理に縦パスを通そうとしてボールを失うことがある。こうした点から、彼のビルドアップ能力は高いものの、時には慎重さが求められる状況もある。とはいえ、フンメルスのパス能力は、現代のセンターバックとして非常に重要な要素であり、彼のプレースタイルを特徴づける一面である。
戦術的な適応とローマでの役割
フンメルスは、ドルトムントやバイエルン・ミュンヘンでのキャリアを通じて、多くの戦術に対応してきた経験を持つ。彼は守備的な戦術から攻撃的な戦術まで幅広くこなしてきており、その柔軟性はローマでの新たな挑戦でも役立つだろう。
ローマでは、守備陣のリーダーとしてチームを支える役割が期待されている。特に、年齢によるパフォーマンスの低下を懸念する声もあるが、フンメルスは依然として高い守備力を誇っており、特に状況判断やポジショニングでカバーすることができる。彼の経験豊富なプレースタイルは、ローマにとって大きな武器となるだろう。
また、ローマのディフェンスラインはフンメルスのリーダーシップに大いに頼ることになるだろう。彼の指示を受けて守備陣が整然と機能することで、チーム全体の守備力が向上する。さらに、彼が若手選手に対してどのように指導し、彼らを導いていくかも注目されるポイントである。
プレー動画
まとめ
マッツ・フンメルスは、その守備力、ポジショニング、パス能力において現代サッカーにおける理想的なセンターバックの一人である。また彼の経験とリーダーシップは、どのチームにおいても貴重であり、現在ローマでの新たな挑戦に挑む彼は、チームに大きな貢献をすることが期待されている。年齢によるパフォーマンスの低下が懸念されるものの、その守備的な知識と戦術的な適応力により、フンメルスは今後も高いレベルで活躍するだろう。