モイセス・カイセドは、現在チェルシーでプレーするエクアドル出身のミッドフィルダーである。2023年に英国史上最高額の移籍金でチェルシーに加入した彼は、かつて同クラブでも活躍したレジェンドMFエンゴロ・カンテと比較されることも多い。この記事ではそんなカイセドについて紹介していきたい。
基本情報・成績
生年月日 | 2001/11/02 |
国籍 | エクアドル |
身長 | 178cm |
ポジション | MF |
利き足 | 右 |
キャリア初期
幼少期から高いポテンシャルを披露していたカイセドは、2016年にエクアドルの名門クラブであるインデペンディエンテに加入。インデペンディエンテ時代には、2017年に膝の靭帯を負傷し約10ヶ月もの離脱を余儀なくされたが、その後の活躍によりトップチームの主力として定着。特に2020年、エクアドル・リーグや南米のコパ・リベルタドーレスにおいて攻守にわたる貢献が高く評価され、後のヨーロッパ進出の道を切り拓くきっかけとなった。
ブライトンでの躍進
2021年2月、カイセドはイングランド・プレミアリーグのブライトンに移籍。翌2021-22シーズン前半戦は経験を積むためベルギーのベールスホトにレンタル移籍したが、2022年に入るとブライトンへ復帰した。そして4月にはレギュラーに定着。アーセナル戦でアシスト、マンチェスター・ユナイテッド戦でゴールを記録するなど、印象的な活躍を見せた。
2022-23シーズンにはブライトンの中心選手として君臨。後半戦以降はプレミアリーグの中でも屈指のパフォーマンスを披露し、同シーズンのクラブ年間最優秀選手にも選出された。
チェルシーへの記録的移籍
2023年、カイセドはチェルシーに移籍金1億1500万ポンドで加入。これはイギリス国内の移籍金記録を更新する移籍となった。しかし、加入当初は巨額の移籍金によってのしかかる巨大なプレッシャーに呑まれ、チームの不振も相まって低調なプレーを見せてしまう。その後は次第にパフォーマンスを上げていき、最終的には公式戦48試合に出場して1ゴール・4アシストを記録。シーズン終盤戦には好パフォーマンスも披露しており、ポジティブな形でシーズンを終えた。
そして、2024-25シーズンは序盤から素晴らしいプレーを披露。チェルシーの中心選手の一人として君臨しているところだ。
エクアドル代表キャリア
カイセドは、エクアドル代表としては2020年10月にデビューし、代表チームでもすぐに頭角を現した。同年にはワールドカップ予選で初得点を挙げ、2022年のワールドカップ本大会にも出場してゴールを記録。エクアドル代表としての今後のキャリアも大いに期待されており、クラブと代表の両方で活躍する存在である。
プレースタイル
ここからは、カイセドのプレースタイルについて詳しく見ていきたい。彼は豊富な運動量を有し、試合全体を通して精力的に動き回るプレースタイルが特徴的だ。
ボール奪取能力
まず、カイセドは中盤でのボール奪取力が非常に高い。ポジショニングセンスとインテリジェンスを活かした守備アクションが際立っており、攻撃が展開される前に相手のパスコースを予測しカットするハイレベルな技術を備えている。これは、チェルシーだけでなくブライトンでも評価されていた重要な要素であり、ポジション取りや動きの先を読む力は、同じく守備的ミッドフィールダーとして知られるエンゴロ・カンテと比較されることも多い部分だ。
また、カイセドの体格は特別大きくないものの、屈強なフィジカルを持ち、相手選手との接触プレーでも引けを取らない。鋭い出足と優れた身体能力から繰り出されるタックルの激しさと精度は秀逸であり、中でも相手のドリブルを阻止するタックル数は数字の上でもプレミアトップクラスである。
守備範囲の広さ
カイセドはボール奪取の精度だけでなく、その守備範囲においても傑出している。スタミナと持久力に優れ、試合終盤まで衰えない運動量でピッチを幅広くカバー。この運動量により、攻守の切り替え時には素早く守備位置に戻ることで、中盤のフィルターとして機能するのだ。迅速なエリアカバーと鋭いプレッシャーで相手ボールホルダーを食い止めつつ、隙あらば自らボールを奪いにかかることも可能。こうしたカイセドのスキルは、チームの中盤に抜群の安定感をもたらすことができる。
ビルドアップとパスの精度
カイセドは先述した守備能力がクローズアップされがちだが、ボールを持った際にも非常に冷静であり、あまり派手さはないがビルドアップの段階で重要な役割を果たしている。特に正確なショート・ミドルパスが得意であり、前方の味方ミッドフィールダーやフォワードへ的確かつテンポよくボールをつなぐ。また、ロングパスの精度には若干のばらつきが見られ、ショートパスほどの安定感はないものの、状況に応じたサイドチェンジで攻撃の幅を広げることも可能だ。
さらに、カイセドはプレッシャーがかかる状況でもミスをすることが少ない。足元の技術がしっかりとしており、ボールコントロールやタッチが安定している。それに加え、持ち前の身体能力(敏捷性)で素早くスペースへボールを持ち込むなど、相手からのプレスに動じることなくプレーすることも可能。このように、カイセドは多様なスキルを兼ね備えており、攻撃の起点としても十分に機能しているのだ。
チェルシーへの適応プロセス
2023年。カイセドはブライトンからチェルシーへと記録的な移籍金で加入したが、当初はチームが過渡期にあり、異なる戦術や環境に順応する必要があったため、彼の本来の実力を発揮するにはやや時間がかかった。しかし、チェルシーでの適応が進むにつれ、チーム内での彼の役割が明確化され、今ではチームに不可欠な存在となっている。
元ブライトンとチェルシーの監督であるグレアム・ポッターも指摘するように、新しいチーム環境でプレーヤーが本来の力を発揮するためには時間が必要なケースも多い。カイセドもまた、チェルシーで安定したパフォーマンスを見せる上で、チームの再構築と周囲の適切なサポートが重要な要素だったといえるだろう。
カンテとの比較
カイセドは、かつてチェルシーでもプレーした守備的ミッドフィールダーのレジェンド、エンゴロ・カンテと比較されることが多い。確かに両者の間に共通点は多々あるが、一方でボール保持時のプレースタイル的な違いはいくつか見受けられる。
例えば、カンテがアグレッシブなドリブルによるボール前進や前線への飛び出しを武器とする一方で、カイセドはよりパスを活かした展開に重きを置いている。また、相手からのプレッシャーに際しては、味方との連携プレーやポジショニングで対処する傾向のあるカンテに対し、カイセドは独力でプレッシャーを躱し、前を向く場面も少なくない。
いずれにせよ、カイセドが全盛期カンテの領域(安定感・支配力)に達するには時間が必要だろう。しかしながら、「ネクスト・カンテ」として相応しいパフォーマンスを示し始めていることは確かである。
プレー動画
まとめ
カイセドは卓越した守備能力に加え、ビルドアップの局面での貢献も兼ね備えたプレミア屈指の守備的ミッドフィールダーである。移籍金の額が飛びぬけていたことで過大なプレッシャーにも晒されたが、現在はチェルシーの中盤に安定感をもたらす欠かせない存在だ。しかも、年齢的にこれから更なる成長を遂げることは間違いなく、攻撃面のクオリティを更に高めることができれば、万能型として世界トップクラスの評価を受けることも可能だろう。今後が非常に楽しみな選手である。