テオ・エルナンデスのプレースタイルを徹底解説:抜群のダイナミズムを誇る超攻撃的サイドバック

選手紹介

テオ・エルナンデスは、フランス・マルセイユ出身のサッカー選手であり、現在はACミランに所属している。主な起用ポジションは左サイドバック。持ち前のスピードとドリブルを活かしたダイナミックな攻撃参加に優れ、現代サッカー界における最も攻撃的かつ優秀なサイドバックの一人と評価されている。この記事ではそんなテオについて紹介していきたい。

基本情報・成績

生年月日1997/10/06
国籍フランス
身長184cm
ポジションDF
利き足

キャリア初期

テオは9歳のときにスペインのアトレティコ・マドリードの下部組織に加入。そこで頭角を現し、2015年にはクラブのBチームでデビューを果たす。しかし、トップチームでの出場機会は限られていたため、2016-17シーズンにはデポルティーボ・アラベスにレンタル移籍。そこで評価を一気に高め。同シーズンのコパ・デル・レイ決勝ではFCバルセロナを相手にフリーキックで得点するなど、その技術の高さを証明した。

レアルマドリードへの移籍

2017年、レアル・マドリードがテオの実力に目をつけ、約2400万ユーロの移籍金で獲得。レアルではUEFAチャンピオンズリーグ優勝を経験し、スーパーカップやクラブワールドカップのタイトルも獲得したが、定位置を確保するには至らなかった。そのため、2018-19シーズンはレアル・ソシエダにレンタル移籍。そこではリーグ戦24試合に出場し、貴重な経験を積んだ。

ミランへの移籍と成功

2019年、テオはセリエAのACミランに移籍。この移籍はミランのレジェンド、パオロ・マルディーニによる説得が決め手となった。移籍後、テオはミランで瞬く間に主力に定着。彼の攻撃性能はミランのスタイルにフィットし、2019-20シーズンには7ゴール・5アシストを記録するなど、サイドバックとしては異例の得点力を見せつけた。

また、2021-22シーズンにはミランの11年ぶりとなるセリエA優勝に貢献し、テオの存在感はさらに増すことになる。同シーズンの彼のハイライトとして挙げられるのは、2022年5月のアタランタ戦で生まれた「95メートルに及ぶ独走ドリブルからのゴール」であろう。しかも、それはミランのリーグタイトル獲得を左右する一戦での決定的な得点でもあり、同シーズンにおけるセリエAの最優秀ゴール賞を受賞した。

さらに、2024年9月にはセリエAでの通算ゴール数が29に到達。ミランの伝説的な左サイドバック、パオロ・マルディーニ氏の記録に並んだ。なお、これまでテオはACミランの年間最優秀選手賞やセリエAのベストイレブンに複数回選出されるなど、世界屈指のSBとしての評価を確立している。

フランス代表での活躍

ミランでの活躍が認められ、テオは2021年にフランスA代表に初選出される。同年のUEFAネーションズリーグ準決勝ではベルギー相手に劇的な決勝ゴールを決め、チームを決勝進出延いては優勝に導いた。また2022年のFIFAワールドカップでも、モロッコとの準決勝で重要な先制ゴールを決めることで、フランスの決勝進出に貢献。このように、国際舞台でも彼の活躍は目覚ましく、フランス代表の主力選手として定着している。

プレースタイル

ここからは、テオのプレースタイルについて詳しく見ていきたい。彼のプレースタイルは、主に抜群のスピードと強靭なフィジカル、そしてドリブル技術によって形作られており、それらによって生み出されるダイナミズムはミランの攻撃に欠かせないものとなっている。

ドリブル能力

テオ・エルナンデスのドリブルは、彼のプレースタイルにおいて最も特徴的な要素といっても過言ではない。彼はドリブル中の空間認識能力が際立っており、前方に生じているスペースへと的確にボールを持ち運んでいくことができる。また、その際には強靭なフィジカルと爆発的な加速が伴っているため、相手ディフェンダーが彼の進路を妨害するのは困難を極めるのである。

ドリブルスペースの見極めに長けたテオは、サイドをただ直線的に突破するだけではなく、状況に応じてサイドから中央へと積極的に切り込んでいく点に大きな特徴がある。こうした彼のドリブルは、往々にして相手のプレッシング方向の逆を取ることになり、チームのプレス回避においても重要な貢献を果たしているのだ。

テオのドリブル能力を象徴するシーンとしては、先にも言及した「アタランタ戦の独走ゴール」が挙げられるだろう。彼のスペース認識能力、そして相手ディフェンダーを寄せ付けない身体能力の高さが組み合わさったプレーの末に生まれた珠玉のゴールである。

ポジションの流動性

先述したテオのドリブル能力を組織の中で最大限に活かすため、ミランは彼に「流動的なポジショニング」を取らせることが多い。特に、2023-24シーズンまで約5年にわたってミランの指揮を執ったステファノ・ピオーリ前監督は、攻守において選手に柔軟な役割を課し、ポジションの流動性を重視していた。そこでテオも、従来の左SBの位置から頻繁に中央方向へとポジションを移し、時には攻撃的MFのような立ち位置も取ることで、相手のマークを外してフリーでボールを受けられる状況を積極的に作り出そうとしていたのだ。そして、狙い通りにボールを受けられた場合、テオのドリブルでの仕掛けによって一気に攻撃を加速することが可能となる。

実際、テオのボールキャリー(ドリブルによってボールを運ぶこと)はミランの戦術において非常に重要な要素となっており、スタッツを見ても常にリーグトップクラスの数値を記録していることがわかる。ダイナミックな動きでチームを活性化させるテオのパフォーマンスは、現在のミランの攻撃に不可欠な縦への志向性と予測不可能性をもたらしているのだ。

チャンスメイク・フィニッシュ能力

ファイナルサードにおいても、テオは相手にとって非常に危険な存在である。彼は味方とのスピーディーな連携プレーや持ち前のスピード・ドリブルを駆使することで、相手ディフェンダーの間にあるスペースへと勢いよく侵入。そのまま敵陣深く(主にニアゾーン)まで入り込み、ラストパスや強烈なシュートへと繋げていくというのが得意パターンの1つだ。

また、アウトサイドエリアから繰り出されるハイクロスも精度が高い。これまでにもズラタン・イブラヒモビッチやオリビエ・ジルーといった長身かつ屈強なセンターフォワード等へとクロスを供給することで、多くのチャンスを演出してきた。

守備面の特徴と改善点

テオの身体能力は、守備面においても活かされている。彼の守備はスピードとフィジカルの強さを活かした1対1での強さが特徴であり、相手の仕掛けを封じ込めることが可能だ。たとえ対峙する相手がオープンスペースで勝負してきても、彼はそのスピードで相手に追いつき、それ以上の前進を許さない。また、彼は空中戦も得意としており、相手に競り負けるような場面はほとんど見られない。

そして、ボールを奪った際には自らがカウンターの先導役となり、ボールを一気に前方へと持ち運んでいく。先述したドリブル能力はポジティブトランジションの局面においても真価を発揮し、彼を驚異的な選手たらしめる大きな要因となっている。

一方、テオには守備面においていくつか改善すべき点が挙げられる。1つは「守備強度の安定感」であり、彼は攻撃に意識が向きすぎるあまりか、時折気の抜けたディフェンスを見せることがある。特に、ネガティブトランジションにおいて素早く帰陣せず、自らの埋めるべきスペースを相手に使われて失点のピンチを招くといった場面が度々あるため、危機意識を常に高く保つことが必要だろう。

また、テオは守備において過度にアグレッシブになる傾向も見られ、不要なファウルや警告を受けることがある。そのため、今後は持ち前の積極性こそ維持しつつも、守備に際してはより冷静かつ安定したプレーを行うといったバランス感覚が求められるだろう。

プレー動画

まとめ

テオ・エルナンデスは、ミラン移籍後に大きな成長を遂げた。特に、パオロ・マルディーニからのアドバイスやステファノ・ピオーリによる指導が、彼のキャリアを大きく変えたといえるだろう。抜群の攻撃性能とポジションの流動性を兼ね備える彼は、チームの攻撃に驚異的なダイナミズムをもたらすことができる。現在はミランでもフランス代表でも主力選手としての地位を確立しており、今後もさらなる活躍が期待されるところだ。

タイトルとURLをコピーしました