マーカス・ラッシュフォードは、イングランド・マンチェスター出身のフォワードである。地元クラブのマンチェスター・ユナイテッドで若くして頭角を現し、同クラブで通算400試合以上に出場してきたが、2025年1月現在その立場が危ぶまれているところだ。この記事ではそんなラッシュフォードについて紹介していきたい。
基本情報・成績
生年月日 | 1997/10/31 |
国籍 | イングランド |
身長 | 185cm |
ポジション | FW |
利き足 | 右 |
キャリア初期
ラッシュフォードは幼少期からその優れた才能を発揮すると、7歳でマンチェスター・ユナイテッドのアカデミーに加入。同クラブでのキャリアをスタートさせた。
ユナイテッドのアカデミーでも、その卓越した技術とスピードで早くから注目を集め、16歳になるとトップチームと練習を始めるなど、早い段階から期待の星として特大の期待を寄せられることに。2015年にはユースリーグやU-18リーグで活躍し、監督を始めとするコーチ陣からリーダーシップと得点能力を高く評価された。
マンチェスター・ユナイテッドでの活躍
2016年2月、ラッシュフォードはマンチェスター・ユナイテッドのトップチームに抜擢され、ヨーロッパリーグのミッティラン戦でデビュー。すると彼はこの試合で2得点を挙げ、欧州大会でゴールを決めたクラブ史上最年少の選手となった。この勢いのまま、3日後のプレミアリーグ・アーセナル戦でもデビューし、再び2得点を記録。ユナイテッドの歴史の中で3番目に若いリーグ戦得点者としてその名を刻んだ。また、2016年のFAカップ準々決勝では見事なゴールを決め、チームのトロフィー獲得にも貢献。同シーズン、ラッシュフォードは公式戦18試合に出場して8ゴールを挙げている。
その後もラッシュフォードはクラブでの活躍を続け、FAカップ、EFLカップ、ヨーロッパリーグ、FAコミュニティ・シールドなど複数のタイトルを獲得。2017年にはユナイテッド史上最年少でトップチーム150試合出場を果たすなど、若手ながらチームの中心的存在へと成長した。
イングランド代表キャリア
ラッシュフォードはイングランド代表としても早い段階から頭角を現した。2016年5月に代表デビューを飾ると、デビュー戦でゴールを記録。これはイングランド代表史上最年少での初得点であった。そして同年のユーロ2016では、18歳229日という若さで大会に出場し、以後も2018年と2022年のワールドカップ、ユーロ2020などの主要大会に参加。2022年のワールドカップでは大会を通して3得点を記録している。
プレースタイル
ここからは、ラッシュフォードのプレースタイルについて詳しく見ていきたい。彼のプレースタイルには際立った強みがある一方で、いくつか大きな課題も抱えている。
スピードと瞬発力
ラッシュフォードの最大の武器といえるのが、最大速度にして36km/hを超える驚異的なスピードである。この能力により、カウンターアタック時には相手ディフェンスラインの背後に素早く抜け出し、ボールを追いかけて先に触れるプレーが可能となる。また、彼は瞬時の加速力も持ち合わせており、一対一の場面では相手ディフェンダーを振り切ることができる。このスピードと瞬発力は彼のプレー全体を支える基盤といえるだろう。
ボディバランスとフィジカル
ラッシュフォードは優れたボディバランスとフィジカルを併せ持っており、プレミアリーグの屈強なディフェンダーに対しても容易に競り負けない。背後のスペースへと高速で侵入するだけでなく、フィジカルを活かしたポジション争いでも優位性を示すのだ。彼の身体的な強みは、トップレベルでの競争において重要な要素となっている。
ドリブル能力
ラッシュフォードのドリブルは、その身体能力と安定した技術に裏打ちされた魅力的なプレーの一つである。短いタッチで細かくボールを動かすよりも、持ち前のスピードを活かした迫力ある突破(ラン・ウィズ・ザ・ボール)が得意だ。このスタイルは、彼がオープンスペースを活用する際に非常に有効である。
シュート能力
ラッシュフォードの右足から放たれるシュートは非常に強力であり、ペナルティエリア内外を問わず正確なミドルシュートを決めることが可能だ。特に左サイドからカットインしてシュートを放つプレーは、彼の十八番である。
また、ラッシュフォードはボールコントロールに長け、チームメイトからのロングパスやクロスを安定してトラップすることができる。これにより、技術的には落ち着いてチャンスメイクやフィニッシュの流れにつなげることが可能となるのだ。
守備能力
ラッシュフォードは守備時に消極的であり、前線から効果的なプレスを仕掛けるプレーを苦手とする。アグレッシブさに欠けるだけでなく、プレス技術(プレスをかけるタイミングや角度)も悪いため、守備時にはチームメイトに負担をかける場面が多い。
判断能力・安定感の欠如
ラッシュフォードの最大の弱点として、プレー中の判断力不足が挙げられるだろう。特に調子が悪い時には、パスやシュートのタイミングを誤り、チャンスを逃す場面が多い。例えば、無理な体勢で強引にシュートを試みたり、逆にゴールチャンスで余計なパスを選択して失敗したりするシーンがしばしば見られる。そしてこのような判断ミスは、個人だけでなくチーム全体の攻撃のリズムを損なう原因ともなりやすい。その結果、「パフォーマンスの安定感に欠ける」というのがラッシュフォード(延いては現所属クラブであるユナイテッド)の評価として定着してしまっているのが現状だ。
加えて、上述の欠点により、守備を固める相手に対しては効果的なプレーができないことが多いというのもウィークポイントの一つである。緻密な連携プレーを求められる場面では、洗練されたパスや動きが不足しており、不器用なプレーが目立つ。そのため、攻撃の中で孤立する場面も少なくないのだ。
プレー動画
まとめ
マーカス・ラッシュフォードは、スピード、瞬発力、シュート力といった優れた身体能力と基本技術を活かし、特にカウンターアタックにおいてその才能を発揮する選手である。一方で、判断力やプレーの安定感に課題があり、守備への貢献も限定的であるため、プレースタイルには明確な強みと弱みが存在する。そのため彼が最大限に輝くためには、自身の強みを引き出す戦術やチーム環境が重要である。プレーのインテリジェンスを高め、安定感を増すことができれば、さらに高いレベルで活躍する可能性もあるだろう。