ヴィクトル・ギェケレシュのプレースタイルを徹底解説:打開力抜群のゴールマシーン

選手紹介

ヴィクトル・ギェケレシュは、スウェーデン代表のストライカーである。現在はプリメイラ・リーガ(ポルトガル1部)のスポルティングCPに所属しており、抜群の身体能力と打開力を武器にゴールを量産しているところだ。この記事ではそんなギェケレシュについて紹介していきたい。

基本情報・成績

生年月日1998/06/04
国籍スウェーデン
身長187cm
ポジションFW
利き足

キャリア初期

ギェケレシュはストックホルム出身で、5歳の時に地元クラブIFKアスプッデン=テルスでサッカーを始めた。2013年にIFブロマポイカルナへ移籍し、ユースチームを経て2015年にトップチームデビュー。同年8月にスウェーデンカップ戦で初得点を記録し、翌年にはリーグ戦で7ゴールを挙げてチームのスーペルエッタン(スウェーデン2部リーグ)昇格に貢献した。2017年にはリーグ戦13ゴールを挙げてブロマポイカルナのアルスヴェンスカン(スウェーデン1部リーグ)昇格を支えた後、2018年1月にイングランドのブライトンと契約している。

ブライトン加入後はU-23チームを中心に活動し、トップチームではEFLカップやFAカップに出場した。2019-20シーズンにはドイツ2部のザンクト・パウリへレンタル移籍し、2020-21シーズンにはスウォンジー・シティ(イングランド2部)、続いてコヴェントリー・シティ(イングランド2部)へレンタル移籍。コヴェントリーではリーグ戦初ゴールを記録し、2021年7月に完全移籍で加入した。2021-22シーズンにはリーグ戦45試合で17ゴールを挙げ、主力として活躍。翌2022-23シーズンには2度の月間最優秀選手賞を受賞するなど、さらなる飛躍を遂げた。

スポルティングへの移籍

2023年7月、ギェケレシュはポルトガルのスポルティングCPへ移籍し、クラブ史上最高額となる移籍金2000万ユーロ(ボーナス含む2400万ユーロ)で契約を結んだ。彼は早々にその期待に応え、同年8月のリーグデビュー戦で2ゴールを挙げると、その後はUEFAヨーロッパリーグやポルトガル国内カップ戦でも活躍。2024年にはプリメイラ・リーガで得点王(29ゴール)を獲得するとともに、リーグMVPにも選出された。スポルティングのリーグ優勝にも大きく貢献し、スウェーデン人選手として2人目のプリメイラ・リーガ得点王となった。また、2024年にはスウェーデン年間最優秀選手賞「ゴールデンボール(Guldbollen)」を初受賞している。

スウェーデン代表キャリア

スウェーデン代表として、ギェケレシュは2019年1月にA代表デビューし、2試合目にして初ゴールを記録している。その後しばらくはユース世代でプレーしたが、2022年頃よりA代表に定着。2024年には代表でも驚異のペースで得点を積み重ね、出場した7試合で10ゴール・4アシストを記録した。

プレースタイル

ここからは、ギェケレシュのプレースタイルについて詳しく見ていきたい。彼は卓越したフィジカルとスピードを兼ね備えた現代的なストライカーであり、前線での競り合いやボール保持能力、得点能力に優れるだけでなく、攻撃面において非常に多才な選手である。

優れた身体能力

ギェケレシュは187cmと長身・大柄ながら、低い重心と柔軟な身体を活かした機動力のあるプレーが特徴的だ。後述する多才な動きによって味方からパスを引き出し、多くのチャンスを作り出していく選手である。

また、ギェケレシュはスタミナが非常に豊富であり、試合を通じて前線からのプレスを続けることが可能。このため、彼は守備面でも貢献度が高く、コヴェントリー・シティ在籍時には前線でのタックルやインターセプトが注目されていた。

プレーの幅の広さ

ギェケレシュの大きな強みは、多様な攻撃オプションを提供できる点にある。スピードを活かしてラインを突破する能力はもちろん、柔軟なターンや動きで相手守備陣をかわし、ドリブルで仕掛ける技術も非常に高い。これにより、中盤でのボール運びやサイドからの突破も可能であり、攻撃の起点として機能することができるのだ。

さらに、彼のパス能力も非常に優れており、2023-24シーズンのポルトガルリーグでは、同ポジション内で最高レベルのチャンス創出スタッツを記録している。また、クロスやカットバックの精度も高く、特に低い弾道のクロスは非常に効果的だ。加えて中央ストライカーとしてだけでなく、サイドに流れてプレーし、タメを作りながら味方選手の侵入(飛び出し)を促す動きも得意とする。

ペナルティエリア内でのプレー

プレーの幅が広いギェケレシュだが、やはり最も脅威となるのはペナルティエリア内だろう。彼は密集した状況でもボールをキープする能力を持ち、テンポをコントロールすることで相手ディフェンダーの意識を集め、守備組織を乱すことができる。そのような状況から、彼は瞬間的な加速を活かしてラストパス(クロスやカットバック)を供給し、味方選手に絶好のチャンスを作り出すのだ。一方、角度(コース)を見つければ即座にシュートを放つテクニックと積極性も兼備している。こうしたアグレッシブかつテクニカルなスタイルは相手守備陣にとって非常に厄介である。

ウィークポイント

一方で、ギェケレシュには改善すべき点も存在する。まず、187cmという長身にもかかわらず、空中戦において物足りなさがあるのは否めない。相手ディフェンダーとの肉弾戦に果敢に挑みはするものの、ジャンプ力や空中での競り合いにおいてその精度に課題を抱えており、特にペナルティエリア内でのヘディングによる得点力には改善の余地があるだろう。

また、左足の使用頻度が比較的少なく、右足でのプレーに偏る傾向がある。左足の技術自体は悪くないだけに、よりプレーの選択や方向を増やすためにも、状況に応じて左足をより積極的に活用することが求められるはずだ。

プレー動画

まとめ

ギェケレシュは、攻守において高いパフォーマンスを発揮する万能型のストライカーである。彼の圧倒的な運動量、プレッシング能力、ドリブル技術、チャンスメイク、そしてゴール前での得点力は、現代サッカーにおいて非常に貴重な資質だ。また、荒々しいEFLチャンピオンシップ(イングランド2部リーグ)での経験を活かし、激しいプレースタイルにもかかわらず怪我に見舞われない耐久性も備えている。

空中戦の精度や左足の使用頻度という課題はあるものの、全体的に見ればほぼ完成されたアタッカーと言えるだろう。彼の多才なプレースタイルは、チームに多くの戦術的オプションをもたらし、どの試合においても脅威となり得る。総じて素晴らしい選手だ。