アブドゥコディル・フサノフは、ウズベキスタン代表のセンターバックである。2025年1月、彼はイングランドのマンチェスター・シティに移籍金4000~5000万ユーロで加入した超注目選手だ。この記事ではそんなフサノフについて紹介していきたい。
基本情報・成績
生年月日 | 2004/02/29 |
国籍 | ウズベキスタン |
身長 | 186cm |
ポジション | DF |
利き足 | 右 |
キャリア初期
ウズベキスタンのブニョドコルの下部組織で才能を認められたフサノフは、18歳でベラルーシのエネルゲティク=BGUミンスクに加入。すぐにレギュラーに定着し、下位常連だったチームを準優勝に導くなど高い評価を受けた。その後、フランス・リーグアンのRCランスからオファーを受け、2023年に移籍することになる。
ウズベキスタン出身選手として初めてリーグ・アンの舞台に立ったフサノフは、9月にメス戦でデビューを飾り、10代ながら堂々したパフォーマンスによって早々に注目を集める。UEFAチャンピオンズリーグではアーセナル戦で欧州最高峰を初体験し、ヨーロッパリーグではフライブルクとの延長戦で120分フル出場。最終的にランスはリーグ7位となり、翌年のヨーロッパカンファレンスリーグ出場権を獲得した。
続く2024-25シーズンでも、フサノフはリーグやカップ戦で堅実な守備を披露し、対人デュエルやインターセプト、クリア数などの数値で高水準を記録。10月にはリーグ最優秀新人賞を受賞し、さらにはシーズン前半戦ベストイレブンにも名を連ねた。これにより、トッテナムやアーセナル、PSG、マンチェスター・シティなど多数の欧州ビッグクラブが興味を示すこととなる。
そして2025年1月、マンチェスター・シティがフサノフを約4000~5000万ユーロの移籍金で獲得した。
ウズベキスタン代表キャリア
ウズベキスタンの最高の逸材と評されるフサノフは、各年代別代表を順調に駆け上がった。2023年のAFC U-20アジアカップ(自国開催)では堅守の中心となり、6試合で1失点のみという成績でチームを優勝へ導いた。また2024年U-23アジアカップでも準決勝進出に貢献し、その後パリ五輪本大会へ出場。グループステージ全3試合に先発したものの、チームは4位で敗退となった。
ウズベキスタンA代表としては、2023年6月のオマーン戦で途中出場しデビュー。すぐにレギュラーの座を確立し、AFCアジアカップ2023(カタール)本大会の最終メンバーに名を連ねた。グループステージでは2試合連続の無失点勝利に大きく貢献し、ベスト16でも活躍するも、警告累積で準々決勝を欠場。チームはPK戦の末に敗退となった。
プレースタイル
ここからは、フサノフのプレースタイルについて詳しく見ていきたい。彼は20歳のウズベキスタン出身ディフェンダーでありながら、すでに欧州最高峰の舞台で通用するだけのフィジカルとスピード、そして高い守備能力を兼ね備えている逸材である。
圧巻の身体能力
まず注目すべきは、アジアのセンターバックとしては稀有なレベルにあるフサノフの圧倒的な身体能力である。トップスピードは時速37キロに達するとされており、センターバックのみならず全ポジションで見てもかなり速い部類に入る。また、そのスピードを活かして背後のスペースをカバーできるのはもちろんのこと、強靱なフィジカルによって対人戦でも競り勝てるのが大きな強みだ。実際、フサノフはリーグアン内の各種対人指標でも上位に位置しており、空中戦、地上戦問わず高い守備成功率を残している。
空中戦
フサノフの186cmという身長は、欧州トップのセンターバックとしてはやや物足りない印象を受けるかもしれない。しかし、実際には空中戦の勝率がそこまで低いわけではなく、少なくともランスの3バック体制のもとでは、さほど弱点として露呈していない。相手のロングボールに対しては果敢に競り合い、高いジャンプ力とタイミングの良さで相手より先にボールを弾き返す場面が多いからだ。プレミアリーグには2メートル近い大型ストライカーも存在するが、フサノフのフィジカルコンタクトの強さや読みの鋭さを考えれば、大きな不安材料にはならないだろう。
対人守備能力
対人守備における積極性もフサノフの特徴である。ランスでは3バックの一角、場合によっては中央の“スイーパー”に近い役割も担っており、マンマークとゾーンディフェンスを使い分けながら相手を追い込んでいた。また、デュエルの意識が高く、いったん相手FWを捕まえた際には、執拗にボールを奪い取ろうとするシーンも少なくない。例えば2024年11月のパリ・サンジェルマン戦では、相手のウスマン・デンベレを中央で捕捉したあと、そのままサイドまで追いかけていき、最終的にファウルで止める場面もあった。こうしたアグレッシブな姿勢は、チームによっては心強い武器となるだろう。
とはいえ、そのアグレッシブさが裏目に出ることもある。危険なタックルやファウルを重要な場面や接戦時に犯しやすい傾向があり、プレミアリーグではカードリスクが高まる可能性がある。また、相手を追いかけるのに集中するあまり、自分のポジションを空けてしまう場面も散見される。例えば件のPSG戦では、ボールを奪うためにサイドの相手選手へと深追いし、中央にフリーの相手を残してしまった例がある。これらの熱くなりすぎる場面をいかにコントロールできるかが、フサノフがトップクラスのDFへと成長していくうえでの大きな課題だといえるだろう。
ビルドアップ能力
ビルドアップ面では、ランスのチームスタイルもあって、現状だとそこまで洗練されたパスワークを要求されていない。中盤を経由するリスクの高いパスよりも、サイドや前線にシンプルにつなぐ場面が目立つ。ときには大きく蹴り出して危険回避を図るプレーも多く、このことは「ボール保持よりも堅実に守り切ること」を優先されるチーム戦術の影響が大きいだろう。しかしながら、フサノフ自身はロングパスや中距離のキックも一定の質を持っており、機を見て鋭い縦パスを送る場面も存在する。
マンチェスター・シティで求められるのは、ランス時代よりも細かいパス回しの精度や相手を引きつけてからのビルドアップだ。ペップ・グアルディオラは加入初期のナタン・アケに「相手を引きつけるまで待ってからパスを出す」よう指導していたとされるが、フサノフも同様にボール保持時の判断を磨いていく必要があるだろう。
プレー動画
まとめ
フサノフは現時点で空中戦やボール保持に課題こそあれど、その欠点を補うだけの身体能力と守備対応力に恵まれた有望株であるといえる。攻撃面でもミドルシュートやロングフィードといった武器を持ち合わせ、今後の指導次第でビルドアップ面も大きな向上が期待できるだろう。危険なファウルが多いという問題も、経験とマネジメント次第で改善の余地は大いにある。マンチェスター・シティというビッグクラブでさらなる研鑽を積むことができれば、フサノフはアジアサッカー界のみならず、世界トップクラスのディフェンダーとして大きく飛躍するだろう。これからの成長に大いに期待したい逸材である。